人の記憶は不思議なもので、実際には起こっていないことを「確かにあった」と感じてしまうことがあります。
そんな“ありえない記憶”の世界を象徴する言葉が、近年話題になっている**「存在しない記憶」**です。
特に人気アニメ『呪術廻戦』で登場したシーンがきっかけとなり、SNSなどで大きな注目を集めました。
一方で、この表現には心理学的な背景や、過去のSF作品にも通じる深い意味が隠されています。
この記事では、「存在しない記憶」の元ネタや呪術廻戦での使われ方、さらにSFや心理学との関係についてわかりやすく解説します。
存在しない記憶の元ネタと呪術廻戦での意味
- 存在しない記憶の起源とは?
- 呪術廻戦で登場した「存在しない記憶」とは?
- 作者・芥見下々の意図と演出の狙い
存在しない記憶の起源とは?
「存在しない記憶」という言葉は、**もともと心理学の“虚偽記憶(False Memory)”**に由来しています。
これは、実際には体験していない出来事を、本人が“本当にあったこと”として思い込んでしまう現象です。
たとえば、家族と行ったはずの旅行や、実際には見ていない映画の内容を鮮明に思い出せるといったケースがあります。
人の記憶は曖昧で、後からの情報や思い込みによって簡単に書き換わることが知られています。
こうした「偽の記憶」は、人間の脳の不確かさやアイデンティティの揺らぎを象徴するテーマとして、多くのSF作品でも取り上げられてきました。
呪術廻戦で登場した「存在しない記憶」とは?
『呪術廻戦』でこの言葉が広まったのは、京都姉妹校交流会編の名場面です。
東堂葵が虎杖悠仁と戦う際、突如として「中学時代に虎杖と親友だった」という存在しない過去の記憶が脳内に流れ込みます。
実際にはそんな出来事はありませんが、この記憶によって東堂は虎杖に深い友情を抱くようになります。
さらに、渋谷事変では脹相(ちょうそう)にも同様の現象が発生し、虎杖を「弟」と信じるようになるシーンが描かれました。
ファンの間では「これは虎杖の能力では?」「演出上のギャグ?」と議論になりましたが、作者の芥見下々先生は“東堂のシーンはギャグ、脹相のシーンは演出上の意図”と説明しています。
つまり、ひとつの現象に見えても、キャラクターごとに意味合いが異なるのです。
作者・芥見下々の意図と演出の狙い
芥見先生は、キャラクターの心理を一瞬で表現する手法として「存在しない記憶」を使っています。
東堂の場合はギャグ演出として友情を描き、脹相の場合は血のつながりを象徴するシリアスな表現に転化しています。
このように、“存在しない記憶”はキャラクターの心を可視化する演出であり、単なるギャグではなく、作品全体のテーマ──「生と死」「他者とのつながり」にも深く関わっています。
存在しない記憶の広がりと元ネタの考察
- 攻殻機動隊やジョジョに見る「記憶改変」の系譜
- 心理学の「虚偽記憶」やマンデラ効果との共通点
- 呪術廻戦以外の“存在しない記憶”の使われ方
攻殻機動隊やジョジョに見る「記憶改変」の系譜
「存在しない記憶」というテーマは、SF作品の定番モチーフでもあります。
『攻殻機動隊』では、他人の脳をハッキングして偽の記憶を植え付ける「ゴーストハック」という技術が登場します。
また、『ジョジョの奇妙な冒険』第5部では、スタンド能力「ホワイトスネイク」が記憶をDISCとして抜き取る・植え付けるという設定を持っています。
これらの作品はいずれも、「記憶=アイデンティティ」という哲学的なテーマを扱っており、呪術廻戦の“存在しない記憶”と根底で通じる構造を持っています。
心理学の「虚偽記憶」やマンデラ効果との共通点
心理学では、他人からの暗示や誤情報によって偽の記憶が作られることが確認されています。
これは「虚偽記憶」と呼ばれ、人間の記憶は映像のような記録ではなく、再構築される情報であることを示しています。
また、ネット上では「マンデラ効果」と呼ばれる現象も有名です。
多くの人が「同じ誤った記憶」を共有するもので、たとえば「ピカチュウの尻尾の先が黒かった」と思い込んでいる人が多いケースなどが代表例です。
こうした現象も、“存在しない記憶”の一種といえるでしょう。
呪術廻戦以外の“存在しない記憶”の使われ方
「存在しない記憶」という表現は、現在ではネットスラングや創作ネタとしても広がっています。
たとえば、「昔あったアニメのシーンを思い出したけど、実際には存在しなかった」といったツイートなどです。
現代では、このような“共有された偽の記憶”がSNSを通じて拡散し、一種のミーム(文化的なネタ)として機能しています。
存在しない記憶の元ネタとは?呪術廻戦から広がる“偽の記憶”の正体まとめ
- 「存在しない記憶」は心理学の**虚偽記憶(False Memory)**が原点。
- 『呪術廻戦』では東堂と虎杖、脹相と虎杖の関係を描く演出として登場。
- 芥見下々先生はギャグとシリアスの両面で使い分けている。
- 元ネタ的には攻殻機動隊やジョジョの記憶改変演出に近い構造を持つ。
- ネットではマンデラ効果など、“みんなの存在しない記憶”として共感されている。